音楽家が知っておくべき3つの事実 2017年版


以前、「その音楽は一体だれが聴くのか?」にも書いた、国際的なレコード業界団体のIFPIから2017年の音楽の消費者洞察レポートが公開されました。

このレポート内容は、音楽を作りインターネット上で公開するすべての音楽家が知っていて損は無い内容だと思います。また、このレポートのデータの対象者は、過去6ヶ月以内にライセンスされた音楽にアクセスしている回答者で、サンプル数は n=11,776 と多く、信頼度が高く誤差の低いデータになっています。
ここで世界人口の約74億人を母集団にして、95%の信頼度、±1%の誤差として計算してみましたが、適正なサンプル数は 9,604 と 1万人 を超えませんでした。

今回は、このなかなか興味深いレポートを私なりに読み解いて、重要だと思うポイントを3つ挙げて説明をしていきます。もしこの記事を読んで更に興味が湧いた方は、IFPIのレポート(英語)を是非読んでみてください。

1. 45%が許諾されたストリーミングの音楽を聴いている

Source : IFPI – Music Consumer Insight Report 2017, P7

ストリーミングで聴くリスナーは前年比37%増と、増加の一途をたどっています。最近発表された全米レコード協会(RIAA)の発表でも同様の傾向が見て取れます。RIAA発表の内容では、ストリーミングが増加する代わりに物理的な手段とダウンロードによるリスナーが減少し、ダウンロードの減少が特に顕著と指し示しています。これは恐らく、世界的に同様の傾向なのだと思います。

なぜか日本だけが取り残されたように出遅れていますが、Apple Musicが約2年前、Spotifyでちょうど1年前くらいと、そういったサービスが他国に比べて出遅れていることや、フリーで使えるWi-Fiが少ないため、「ギガが減る」と言って、キャリア通信での利用を拒むユーザーがいるからかもしれません。

どの国でも通信費に依存する部分はありますが、今後ストリーミングで聴くリスナーはさらに拡大していくと思います。日本もBIGLOBE SIMで利用可能なエンタメフリー・オプションのようなストリーミングサービスの通信量がカウントされないプランが一般化すれば、海外各国と肩をならべることも難しくないのかもしれません。

2. 若者ほどスマートフォンで音楽を聴いている

Source : IFPI – Music Consumer Insight Report 2017, P13

上位2つがメキシコ、ブラジルと南米は強いですね。音楽を聴いてる人はほぼスマートフォンを使って聴いたことがあると言っても過言ではない数字です。

前項ではストリーミングに絞ったものでしたが、音楽をスマートフォンで聴いている枠でみると、日本は44%と、先ほどの18%と言う数字よりはマシにみえます。総務省発表の平成28年版 情報通信白書によれば、スマートフォンの普及率は72%と、ここ2, 3年でだいぶ普及しています。この普及率とIFPIのデータをざっくりかけあわせて言えば、日本では10人中7人がスマートフォンを持っていて、このうち3人がスマートフォンで音楽を聴いていることになります。

年齢に関して言えば、やはり若者が圧倒的に多いですね。私のような曲を作る人は「ボディーソニックを感じて欲しい!」というエゴを捨て、スマートフォンで聴かれることを念頭に曲を作る必要があるのかもしれません。また、Kickstarterにはこんなデバイスがあることですし、もしかしたら新しい楽しみ方が出てくるのかもしれません笑

3. ストリーミングで聴くうち55%は動画によるもの

Source : IFPI – Music Consumer Insight Report 2017, P17

YouTubeに代表される動画サービスを利用して音楽を聴く動態は容易に想像できますが、ここまで割合が大きいとは思ってもみませんでした。しかも動画サービスを利用する55%のうち、46%がYouTubeを利用しているというデータには驚かされました。

しかし、多く利用される一方で、こう言った動画サービスは音楽家に適正な利益が還元されていないとする「Value Gap (バリューギャップ)」問題がより顕著になりつつあるようです。米国の音楽家らなどがDMCA(デジタルミレニアム法)は破綻していると米議会へ公開書簡を送りつけたり、RIAAのCEO ケリー・シャーマン氏がこの問題についてブログを書いたりしています。

レポートではYouTubeとSpotifyが比較されていますが、YouTubeにもYouTube musicがありますし、Spotifyとは似たビジネスモデルだと言えます。もしかすると、YouTubeはSpotifyに比べ、映像データのインフラ・配信コストがある分、Spotifyより多く還元することが難しいのかもしれません。

現状取り巻く環境を鑑みた戦略

ここまでIFPIのレポートなどを読み解いてきましたが、いかがだったでしょうか?
もし私がこの取り巻く環境を鑑みて戦略を立てるとするならば、僭越ながら以下のような提案をします。

1. ストリーミングで聴かれることを前提にする
他にも聴いてもらえる手段はありますが、これから伸びていく手段に手をこまねいて待っているだけでは何も得られません。また、綺麗な音で聴いてもらえるに越したことはないですが、場合によっては通信環境に依存して低ビットレートになり音質が犠牲になることも想定する必要があります。
2. スマートフォンで再生されることを想定する
若い人に多く聴いてもらいたいならば、この条件は受け入れざるを得ないと思います。また、周波数特性のクセや再現性が低いなど、低質なイヤフォンで聴かれることを想定する必要があると思います。
3. できるだけ多くの場所で聴けるようにする
多くの人に聴いてもらうことをポイントにするならば、リスナーに聴いてもらえる環境に自ら進んで公開する方が、聴いてもらえるチャンスは増えるはずです。とはいえ、小さな音楽家にとって、雀の涙ほどの印税のために苦労して大手サービス上でダウンロードやストリーミングで聴けるようにするアドバンテージはもはやないのかもしれません。
4. 自ら進んでYouTubeに公開する
適正な対価が得られないと批判の的になっていますが、このような方法もアリかもしれません。また、YouTubeのチャンネル登録者が増やせるならば、ライブ配信を行いSuper Chat機能で投げ銭を受け取ることも可能になります。

と、このように考えてみましたが、みなさんはこのような情報を元にどのように考えますか?もし良ければみなさんと議論もしたいですし、どのように考えたのかを知りたいので是非教えてください。

次回は適切な情報量と導線設計について書きたいと思います。