私の作った音楽作品「未来寿司」のリリースに合わせてNFT(Non-Fungible Token:ノンファンジブルトークン)を作って販売しました。上記はその作品のMusic Videoです(もし良かったら見てみてください)。
普通に考えたら高い値段がつく方が作り手にとっては収益にもつながり嬉しいのでしょうが、今回とった販売方法だとどうしても価格が安くならざるをえない仕組みになりました。
NFTをどのように販売したのか
まずは、NFTをどのように売り出したのか説明します。
上記はNFTマーケットプレイスで一番規模の大きいOpenSeaで販売したNFTです。
サムネイルはアニメーションGIF、登録したメディアはMP3、規格はERC-721、mint(NFTを新たに作成すること)はOpenSeaなどのマーケットプレイスを利用せずに、Chocofactory(チョコファクトリー)と言うところで、Ethereumの独自コントラクトで行いました。
OpenSeaで共有コントラクトを使ってmintをすれば費用を抑えることができます。しかし、OpenSeaが未来永劫続くとも限らないので、プラットホームに依存することを避け、少しコストはかかりますが独自コントラクトでmintすることを選択しました。
独自コントラクトにすれば、mintしたNFTをマーケットプレイスに縛られずに各所で販売できます。私はOpenSeaとRalibleで販売しました。
独自コントラクトのNFTの作成方法についてはヘルプやたくさんの記事が既にありますので、ここでは割愛します。
またブロックチェーンはPolygonなど他の物を使えばかなり費用を抑えることができます。私は初めてのNFTということでEthereumを選択しましたが、特にこだわりがない方はPolygonなど他の物でも良いかもしれません。
売れた際にプラットフォームに徴収される手数料が2.5%、売手に入るロイヤリティーを7.5%に設定してトータルで10%になるように分かりやすくしました。
なぜ価格が安くなるのか
上記を読んで、なぜ安くなるのか?とお思いでしょう。
実は購入した人には「24bit/96kHzのWAV形式の音楽ファイルをダウンロードできるリンクを教えます」ということが明記してあります。
なので、この曲はMusic Video用に編集してあり若干の違いはあれど、Spotify、Apple MusicやYouTubeなどで聴くことができるので、余程のコレクターでなければこのNFTを所有し続けるメリットがほとんどありません。
どういうことかと言うと、転売すればほとんど費用をかけずに高音質のデータだけを手に入れることが可能となりますし、そのデータは当然複製が可能ですから、データ入手後は、以前の購入者がそのデータを流出させて自分が所有しているNFTが値崩れするかもしれないので、いち早く売り抜けたくなると思います。売り抜けたい心理が働けば、当然NFTの販売価格は高くはならないでしょう。
作り手としては少額でも転売される度にロイヤリティーが手に入り、なおかつたくさんの人に聞いてもらえ、買い手は少額で高音質のデータが手に入るので、互いにプラスに作用すると考えました。
他にはどんなやり方があるのか
ところで、今成功(販売したものが全て売れて値上がり)しているNFTにはどんな物があるでしょうか?今成功しているNFTには概ね以下の特徴があると思います。
- SNSのアイコンなどにできる
- 1,000単位の複数の作品をみんなで所有する
- いくつかのパーツを組み合わせて(プログラムで)生成されている
- 最初は低額(mint時は高くない)
また、成功すると結果的に値上がりを伴うので、所有していることをさらに自慢できるというのも特徴の一つかもしれません。
この他、私が初めて購入したNFT(1989年頃にMacPaintで作られた画像)がとても面白い方式を採用していました。
それは「サブディビジョン方式」と呼ぶもので、作品価格を作り手が任意に決めた価格を購入者数で割り算することで価格が決定する方式です。
どういうことかと言うと、購入者数が多ければ多いほど購入価格が低くなり所有者が増えます。また、デジタルデータにオリジナルと複製の区別がないことから結果的に複数の所有者がまったく同じ作品を持つ「分散所有」の形態になるのです。とてもこのトレンドを捉えた方式を採用していると思いました。最終的にこの100万円の作品には912人が応募して一人当たり1,092円で購入できました。
ちなみに、みんなのよく知っている希望購入者が購入価格を競っていくものをイングリッシュオークション方式と言います。
ここまで紹介したやり方は、1アーティストの作品がアートコレクターに高額で落札されるというこれまでのアートの所有に対するカウンターパートというか、複数人・コミュニティーで所有して育てるという新しいアートの楽しみ方なのかもしれません。
今回のNFTに使われた曲
今回NFTにした音楽(2021年11月24日リリース)は「魚が絶滅し寿司が違法となった時代の隠れ寿司屋で流れている曲」をコンセプトに作りました。それは退廃的な未来の世界で映画ブレードランナーのような世界のイメージです。もしそこに寿司屋があったら、どんな音楽が流れると思いますか?想像してみてください。
世界的な健康志向で寿司が人気になりマグロは将来食べられなくなるなんて言われていたりします。このコンセプトの未来はあながち遠からずと言うところなのかもしれません。
リミキサーには、石野卓球氏のレジデントパーティー STERNE のレジデントを6年努めた Lyoma 氏による90年代後半を彷彿させるスペイシーなテクノのリミックスと、世界最大のチップチューンの祭典 Square Sounds Tokyo に出演経験のある Tobokegao 氏による、今巷で話題の M8 Tracker を使ったFM音源のリミックスを収録しています。是非聴いてみてください。
販売したNFTはどうなったのか
ここまで最もらしいことを散々書いてきましたが、実は一つも売れていません笑
自分なりに売れない分析をしてみた結果、原因は以下ではないかと考えています。
1. プロモーションが足りない
私は1アーティストとしてメジャーとは言えませんし、カリスマがあるわけでもないので、たくさんの人に知ってもらう必要があるのですが、前述のようなコミュニティーを作ってみんなで盛り上げていくという方法をとっていない中で、認知度を上げていくのはなかなか難しかったです。
ちなみに暗号資産関連はほとんど広告が使えません。NFTに一番親和性のあるTwitterで試してみようと思ったところ、出稿が禁止されていることを知りました(なので怪しいブローカーがいっぱいいます)。
2. Web3 なにそれ美味しいの?
自分の音楽を聞いてくれる層に暗号資産及びウォレットを利用している人が少なかったように思います。仮に買いたいと思ってくれた人が居たとしても、まず国内の暗号資産取引所に身分証明書を提出して取引が認められたアカウントを作成し、そこから入金・購入までは余程の情熱がないとそこまではしてもらえないだろうし、もししてくれる人が居たとすれば、それはそのNFTを手放したがらない熱狂的なファンかもしれません笑
やはりまだ、ウォレットを利用するまでには、一定のハードルがあると思います。
3. パイが狭い
今回作った私の曲が、今現在のNFTを売買する層にどれだけマッチしていたのかという問題もあると思いました。
簡単に言ってしまえば、音楽ジャンルはTech House。このジャンルでかつ少し変わった和風テイストな曲が琴線に触れる人も少ない可能性が高いです。さらにこれらと併せてNFT売買層という3つの円の重なり合うところがターゲットになるので、かなりパイは小さい事になります。
やりようによっては、そのパイにリーチできるのかもしれませんが、少なくとも私はそうできませんでした。
うまくリーチできれば、パイは狭いのでそこへの到達コストは低いのかもしれません。
最後に
というわけで、いかがだったでしょうか?失敗談を公開することで、きっと誰かの役に立つと思い記事を書いてみました。
音楽NFTはまだ少ないと感じているので、色々な形が出始めて、もっと盛り上がってくれたら良いなと思っています。
まったく売れてなかった作家のNFTが、有名なインフルエンサーによって紹介・購入されたことで一夜で名を上げるなんていう夢のある世界です。奇跡を信じながらも、着実にファンを作っていけるようなチャレンジの参考になれば幸いです。
ちなみに、今回販売したNFTが購入されてしまうと、この記事の価値がなくなってしまうので、絶対に購入しないでください笑