「日本人の勝算」読了


日本在住30年来の元ゴールドマン・サックス「伝説のアナリスト」で日本を愛するイギリス人のデービッド・アトキンソン氏が、学術的論文やデータを論拠に現状の日本とその問題点を指摘し、今後日本がどのようにしたら人口減少・少子高齢化を乗り切ることができるのかを指南しています。

まずこの本を読んで感じたことは、著者は本当に日本が好きなんだなということと、日本をより良くしたいと著者が情熱をもって提案しても、否定的な意見を言う方がとても多く、大変腐心したんだろうなと感じる文が本書の随所ありました。

内容は、基本的に過去の著作を踏襲していて、その主張は一貫しています。
本書のポイントは以下です。

第1章

  • 人口減少と高齢化はデフレ圧力で、それは今後より一層厳しくなる
  • 量的金融緩和は、そもそも人口減少していくなかでは需給減であり効果が薄い
  • マネタリーベースを上げしたところで借り入れをする主な年齢層は少ないため効果が薄い

第2章

  • これまでの世界の経済成長は人口増加モデルだったが、日本は人口減少モデルに転換したので、まだ伸び代のある生産性(世界第28位)を上げる必要がある
  • 「いいものをより安く」の価格競争は人口増加前提の Low raod capitalism の戦略で、人口増加が減少下にある場合には、価格が安いために生産性が低くなるので High raod capitalism の戦略「価値の競争」へ移行する必要がある

第3章

  • デフレ圧力緩和のために人口減少と高齢化による過剰供給を輸出で調整する必要がある
  • 訪日外国人を増やす観光戦略は外貨獲得という意味で輸出産業
  • 原材料ではない部品などの中間財の輸入は生産性向上につながる

第4章

  • これから企業数は減少していくなかで、中小企業は数が多く、大企業にくらべて生産性が低いことが問題
  • 生産性向上には中小企業の企業統合と企業規模拡大が必要

第5章

  • 経営者に期待できないので、国策として生産性向上と相関が高い最低賃金の緩慢な引き上げを継続してやる必要がある
  • 最低賃金引き上げは失業率に影響はない

第6章

  • 経済を縮小させないためには、ざっくり今から2060年までに毎年最低でも1.29%の生産性向上が必要
  • 一番生産性が高いとされる40代がこれから減少するのは逆風
  • 国の経済政策として生産性向上のために3〜10%の範囲で毎年最低賃金を上げる必要がある
  • 精神論で解決できるほど甘く無い状況にもかかわらず、日本人は保守的な人が多く、欲が足りない

第7章

  • 生産性向上のために教育を子供だけでなく大人にも行う必要がある
  • 日本の雇用規制は海外からみて厳しいものではないので、経済成長のための雇用規制緩和は不要
  • 最低賃金引き上げのために大人向けの教育(人材育成トレーニング)を全員に強制で行うべきだ

本書を読んで、著者の主張に概ね同意です。
人口減少と少子高齢化は強力なデフレ要因で、今日の日銀の金融緩和では太刀打ちできない可能性があると思いました。
本書は世界は人口増加で、日本が人口減少の場合の話です。もし、さらにこの先の未来で世界の人口増加がピークアウトした場合にはどうでしょうか?きっと世界中で厳しい生産性の競争時代に突入すると思います。その頃には日本の生産性向上の伸び代は少ないかもしれません。もし日本の人口減少が下げ止まって増加に転じていれば、高い生産性を維持したまま人口ボーナスのある時代がやってくるのかもしれません。
高い生産性(ユニークで高付加価値)という意味では、インバウンドの観光(類稀な文化とおもてなし精神)は良さそうに思います。ただし言葉の問題はあると思います。商業施設だけでなく、街や駅で困っている外国人を助けられる日本人の必要性を感じます。
最低賃金底上げや生産性向上については、国や経営者に対しての提案も良いと思いますが、労働者が各自でとれる防衛策の提案があっても良かったのかもしれません。また、大人向けの教育はもちろん賛成ですが、子供向けの教育については、そういった日本を見据えた内容に変えていく必要性があるでしょう。
年長者を敬うことも大切ですが、それ以上に若い人が尊い時代がやってきて、価値観も大きく変わり否が応でも順応せざるを得ない状況がくると感じさせられました。